ここ数年のうちにアロマテラピーが癒しやリラクゼーションだけではなく、医療の現場で取り入れられることが増えてきています。
医療現場の中でも緩和ケアは、アロマテラピーが受け入れられやすい場所かもしれません。
実際看護師がアロマの資格を取得して緩和ケアにアロマトリートメントを取り入れていたり、ボランティア活動でハンドトリートメントなどが行われたり、医療者とセラピストが連携してアロマトリートメントが行なわれたりしています。
ここでは、実際にアロマボランティアをしての気づきも踏まえ、緩和ケアでアロマを取り入れるメリットと注意点を看護師目線でご紹介します。
緩和ケアで看護師がアロマテラピーを取り入れるメリットは?
まず緩和ケアについて少し情報をおさえておきましょう。
緩和ケアというと、がんが進行して治療が出来ず最終的に行く場所というようなイメージを持たれている方もまだまだいらっしゃるようです。
看護師をしている人でも、そのように思っている人はいらっしゃいますし、私も看護師なりたての頃はそう捉えていました。
緩和ケアとは簡潔に言うと、
「重い病気に伴う心身の苦痛を和らげるケア」
です。
そして緩和ケアは、がんが進行した状態の人が受けるケアというわけではないんです。
必要に応じて受けることができます。
がんによる身体的な症状がはっきり出る時期はかなり進行してからの場合も多いです。
ですが、初期の状態でもがんと診断された人の心にはさまざまな苦痛が生じます。
病気の症状や治療に伴う身体的な苦痛もありますし、社会的な役割における苦痛、死の恐怖や人生とは何かなど、あらゆる側面において苦痛が生じます。
そしてその苦痛は、病気になった本人だけではなくその家族にも生じるものです。
そこで緩和ケアでは、医師や看護師だけでなく薬剤師や栄養士や心理士、ソーシャルワーカー、ボランティアなどが連携し、患者や家族のサポートを行います。
病気だけに意識を向けるのではなく、その人の精神的・身体的・社会的・スピリチュアル的な側面をトータル的に捉えて、苦痛の緩和をしていくのです。
そして、その人の価値観や生活スタイル、人生において大切に思うことなどを大切にしていきます。
緩和ケアについてはこちらのサイトが分かりやすいです。
日本では、アロマは保険の適用がありませんので自費となります。
また、アロマテラピーへの理解が得られないなど、組織の中ではアロマを取り入れていくのが難しい場合も多いです。
ですが、現代西洋医学が及ばない心と体の問題やスピリチュアルな側面に対して代替医療の効果が認められ広まりつつある近年。
医療や福祉の現場で代替医療が取り入れられているところも増えてきています。
特に緩和ケアでは、さまざまな方法を柔軟に取り入れられているところが増えていますね。
看護師は、医療現場で最も患者や家族に密に関わることができる存在であり、各支援者との連携も取りやすい存在です。
そして、病気や病気に伴う心と体の変化をリアルに観ることができます。
そんな看護師が、アロマテラピーを緩和ケアに取り入れることは非常に多くのメリットがあると私は考えています。
例えば…
・エッセンシャルオイルが持つ香りが脳の視床下部に働きかけて自律神経を整えて痛みを抑えられる
・がんの発症に伴ううつ症状や不安感といった精神的な苦痛を緩和してリラクゼーション効果を得られる
・内臓に負担を加えずに治療による副作用の軽減を図れる
・ブレンドされたオイルで優しくトリートメントすることで浮腫などの症状を和らげられる
上記の内容はほんの一部に過ぎません。
でもこれらの効果と看護のスキルを上手に組み合わせることで、患者様に提供できることは確実に増えるはずです。
最近では、看護学校の授業の一環としてアロマテラピーを取り入れているところもあります。
実習で学生同士アロマトリートメントを行なったり、臨床実習で受け持ち患者さんへのケアにアロマテラピーを取り入れているところも。
患者との信頼関係を大切にしていく中でアロマテラピーを自然に取り入れられるようになれば、きっと他の治療やケアとの相乗効果が期待できると思います。
もちろん香りの好き嫌いはあります。
けれども、アロマなんて全く興味のない人が、その香りから昔の懐かしい思い出を思い出しで嬉しそうに話し始めたことなどもすごく多いんです。
香りは人の心を自然に開き、コミュニケーションをスムーズにするのにもとても役立ちます。
緩和ケアにおいて特に思いが表出できることは、とっても重要なポイントでもあります。
緩和ケアでアロマを取り入れる時の注意は?
とは言え、緩和ケアでアロマを取り入れる場合、メリットばかりではありません。
がんを患っている患者は、状態によっては全身の免疫力の低下、腎機能や肝機能が低下、浮腫、疼痛、吐き気など、さまざまな状態になっています。
それらの状態を緩和するのにアロマは役立ちます。
ですが、一方であまり状態を理解せずして安易にアロマを取り入れると、状態を悪化させてしまうような危険性も・・・
ですから、緩和ケアでアロマセラピーを取り入れる際には健康な状態の人に提供する以上に注意が必要ではあります。
例えば、トリートメントを行うと血流もリンパの流れも良くなります。
そして、そのことがかえって治療の妨げになってしまうこともあります。
血圧を上げたり下げたり、リンパの流れにのって、流したくないものを流してしまうことになったり。
浮腫が強くて、肌がデリケートな場合もあります。
吐き気などの症状が強い場合もあり、香りの刺激で吐き気がひどくなることも。
また、香りそのものが苦手で、あまり触れられるのが好きではない場合もあります。
その場合には、かえって心身に負担をかけてしまいますね。
なので、緩和病棟でアロマを扱う場合は、周囲の患者への配慮も大切になります。
緩和ケアで効果的にアロマを取り入れるためには、やはりスタッフの方々との密なコミュニケーションが大切になります。
そして、決して無理はしないこと。
患者があまり受け入れが良くない場合には、さっとやめることも大切です。
また、ご家族が付き添われているケースも多いので、ご家族への説明も大切ですね。
緩和ケア病棟に入りたての患者や、状態が不安定な場合など、患者も家族もデリケートになられています。
その場合、安易にアロマを提案するのはおすすめではないこともあります。
状況を見ながら、スタッフ間で十分相談しつつ取り入れていくことが望ましいです。
前後の変化もしっかり観察し、こんなことくらいでと思うようなことも、気になることがあればきっちり報告しましょう。
まとめ
緩和ケアでは、触れることや人の温かさや笑顔など、西洋医学による治療以外での人の関わりがもたらす効果は非常に大きいです。
また、心にさまざまな思いを抱えている患者も家族も多く、それを吐き出せることで心が癒され、症状が緩和することもあります。
でも、いきなり話を聴くのも難しい場合もありますよね。
そんな時、香りの力は役立ちます。
香りと優しいタッチで心と体がふわっとゆるめば、自然と胸の内を話したくなることも多いもの。
緩和ケア病棟では特にアロマは役立つ面が多いと実感しています。
ですので、安全に配慮しつつ上手く取り入れていけると良いですね。