家族がうつ病になった時、何とか励まそうと思ったり、元気になってほしいと焦ったりしていろいろな言葉をかけると思います。
ですが、その言葉がけ1つでうつ病になっている人の状態が、良くも悪くも大きく変わってしまうことがありますよね。
この記事では、うつ病の人に言葉をかける時どんなことに気をつけると良いのかについてお話します。
考え過ぎて、うつ病の家族にかける言葉が見つからない
家族がうつ病になった時、うつ病について熱心に調べる人もいれば、全くうつ病について知ろうとしない人もいます。
私の場合は、後者でした。
今でこそ精神科看護に携わり知識もつきましたが、母がうつ病になった当初は、全然病気への理解はありませんでした。
当時まだ私自身中学生だったというのもあるのですが、実は看護師になってからも、あまりうつ病について勉強しようとしたことはなかったのです。
母への関わり方がわからず困ってはいたのですが、何故か自分で勉強しようとは思うことはありませんでした。
今思うと、自分のことながらとても不思議です。
そんなある日、本屋さんでうつ病の本が目に入り、吸い寄せられるように読みはじめました。
その本には、うつ病の人にかける言葉についても詳しく書かれていました。
うつ病の人にかけてはいけない言葉には、
「がんばれ」
「早く治って」
「なぜできないの?」
「努力が足りない」
などがありますよね。
励ます言葉や責めるような言葉は、絶対タブーとされています。
「なぜできないの?」
「努力が足りない」
などは、うつ病ではなくても言われたくない言葉かもしれませんね。
反対に、
「辛かったね」
「よくがんばってきたね」
「ゆっくり休んでね」
など、共感を示したリ、休息を促す言葉は良いとされています。
ざっくり書きましたが、文献などを見ると、もっと細かく書かれています。
本を読むまでは、うつ病のことを知らな過ぎてかける言葉に悩んでいました。
腫れ物に触れるような感じです。
しかし、今度は知識を詰め込み過ぎて、頭でっかちになってしまったのです。
つまり、知識が先行してしまい、関わり方がかえって不自然になってしまったのですね。
うつ病の母が、人からかけられて嫌だった言葉と嬉しかった言葉
「がんばって」
母も当時、やはりこの言葉は嫌だったと言います。
がんばりたいけど、本当に動けないのです。
うつ病になりやすい人の特徴として、がんばりやさんで完璧主義である性格はよく聞きますよね。
確かにうつ病になる前は、母も結構よく動く方で、きちんとしないと気がすまないところがあったなぁと思います。
そんな母が動こうとしない・・・
動けないくらいしんどい状態・・・
そういうことなんですよね。
また、ある知り合いの人に、「お笑いでも観て治し」と言われたことがありました。
お笑いが悪いわけじゃありません。
ただ、なにを観ても心に入ってこない状態なので、そんな簡単に言わないでほしいと思ったようです。
テレビを観たり、お出かけしたり、何かで気分転換しようとしても、簡単に気持ちがまぎれるような状態ではないのですね。
今まで好きだったことにも、全く関心が向かないのですから。
その他、「うつ病の先生なわけだから、治った時には人に教えることができる」と言われたこともあったようです。
これは、何度も母から聴きましたが、今でもまだこの言葉には怒っているようです。
確かに、経験したことによる気づきや学びは、後になれば宝です。
しかし、ものすごくしんどい最中に上記のようなことを言われても、受け入れられるものではありません。
相手の人も悪気はなかったのだと思います。
ですが、経験を宝だと思えるようになるのはもう少し後の話かなと思います。
あともう1つ。
「スーパーでコロッケでも買って、お皿に用意することぐらいはできるでしょ」
これは母が、食事をつくることができずに悩んでいた時期に、人に言われた言葉だそうです。
食欲不振が激しかったことと、なにをどうして良いか手順がわからなくなったことにより、食事の準備ができなくなっていました。
恐らく言った人もやはり悪気はなく、良かれと思ってのアドバイスなのでしょう。
しかし母には、「しんどさを全然理解してもらえていなくて、努力が足りないと思われている」と感じたのです。
訪問看護のご利用者様の中にも、主婦でうつ病になられている方はたくさんいらっしゃいます。
そしてやはり、「なにをどうして良いか手順がわからない」という人は多いです。
食事の準備をしようと思っても、本当にどうして良いかわからないのですね。
今までできていたことができなくなる・・・
そう考えると、私もやっぱり自分に対してすごく情けないと感じてしまうかもしれません。
一方、人にかけられてうれしかった言葉もあると言います。
言葉というか、うつ病になっていることは知りながらも、普通に話しかけてもらえた時、母はとても嬉しかったそうです。
母がうつ病になっていることを知ると、周りの人は気を遣ったり、よそよそしくなったりするのを肌で感じてきたのですね。
それが、うつ病であることは知りながらも、ごくごく自然に話しかけてもらえた体験は、母にとってとても嬉しかったようです。
これといって特別な言葉がけをするわけではない。
けれども温かく、自然に接してもらえることは、もしかしたら一番安心できることかもしれません。
心に余裕があったなら、もう少し適切に言葉をかけることができたかも
母がうつ病になった時、私はどんなに母が同じ訴えをくり返しても、それに対して否定する言葉をかけることはありませんでした。
これは努めてしていました。
うつ病のことはわかりませんでしたが、母は他に話ができる人がいないと思ったので、ひたすら話を聴いていたのです。
ただ聴いているだけなので、気の利いた話の聴き方ではありませんが(^-^;
ところがある日、何度もくり返される訴えにとうとう堪らなくなり、母の話を聴くことを拒否してしまったのです。
「14年一緒にいたからもうお母ちゃんいなくなっても良いやろ?」
この言葉が、私にはものすごく辛かったのです。
なぜ私の存在があるのに、そんなことを言うのか・・・
私の存在は、母にとって生きる理由にはならないのか・・・
そんな想いでいっぱいになり、もうこれ以上母の話を聴けないと思ってしまったのです。
その様子に母もはっとし、自分を責め、そして孤独になりました。
母のこと以外にも、学校の友達関係や受験のことでの悩みもあり、私も気持ちが不安定でした。ですから、心の余裕は全くなかったのですね。
もし、うつ病のことをちゃんと知っていて、自分自身にも心のゆとりがあれば、もう少しましな対応ができたのではないかと思います。
訪問看護のご利用者様も、「努力が足りない」「ぜんぜん良くならない」など言われて辛いという人がいます。
最初からずっと、そのような厳しい言葉をかけるご家族もいます。
ですが、これまでは絶対そんなことを口にしなかったご家族が、突然上記のような言葉をかけてしまっているケースも少なくありません。
ご家族の心に余裕がなくなっていたのです。
うつ病の人に関わる時、家族にできる3つのこと
うつ病の人に関わる時、家族にできる3つのこと。
それは、
1、うつ病を知る
2、目の前にいるうつ病に人を知る
3、家族自身の心のケア
家族がうつ病になった時、やはり最低限の知識は必要だと思うのです。
しかし、うつ病になっている人の状態や、置かれている環境など、同じうつ病でも適切な関わり方は少しずつ違うものです。
ですから、うつ病のことを知りつつも、あまり過剰に意識しすぎないことも大切です。
まず、本人の話に耳を傾け、何を感じて何を思っているのかを知ろうとしてみる。
上手い言葉がけはできなくても良いので、とにかく話を聴いてみる。
目の前にいる、うつ病になっている人の立場に身をおいて考えることができると、おのずと適切な関わりができるようになります。
かける言葉が見つかります。
ただ、そのためには家族が心に余裕をもてることが必要です。
うつ病になっている人を支えるご家族のケア、本当に大切です。